むし歯予防の最前線☆フッ素編
- 2025年10月10日
- 一般歯科
今回はむし歯予防についてのお話です。
むし歯はなぜ起こるの?
皆さんはむし歯が起こるメカニズムをご存じですか。むし歯は、いくつかの要因が重なった時におこります。その要因を4つご説明します。
①むし歯菌:ミュータンス菌とも言われます。これは生まれたばかりの赤ちゃんのお口の中にはいません。パパやママなど近しい方のお口の中にむし歯菌が多い状態だと、日常生活で唾液などを介在し感染します。
②糖分:いわゆるお砂糖です。これはミュータンス菌のエサになります。ミュータンス菌がお砂糖を取り込むときに、「酸」を産生します。この酸が歯を溶かしてしまうのです。
③宿主:お口の中の「唾液」には「干渉能」という作用があり、酸を中和させる能力があります。この干渉能が高い方は、むし歯になりにくいですし、干渉能が低い方、そもそも唾液が少ない方はむし歯になりやすいということになります。また、エナメル質形成不全と言って、元々歯のいちばん硬いエナメル質が弱い方もいらっしゃいます。そのような方もむし歯になりやすいです。
④時間:③でもあったように、唾液には、酸性になったお口の中を中和する能力があります。ただ、食べる回数が頻回になると、いくら唾液に干渉能があっても、中和されるのが間に合わず、常にお口の中が酸性の状態になってしまいます。そうなると、むし歯が起こってしまいます。
この4つの要因が重なった時に、むし歯になってしまうため、逆に言うと、1つでもこの要因を減らすことができればむし歯予防につながります。
今回は、③④の改善にもなるフッ素での予防を取り上げていきます。
フッ素はなぜ歯にいいの?
フッ化物は有効性と安全性が認められ、世界的にも広く活用されているむし歯予防法です。予防の効果としては、
①歯質の強化:フッ素が歯の表面にあると、むし歯菌が酸を出しても歯が溶けにくくなります。
②再石灰化を促進:初期のむし歯では、カルシウムやリンなどのミネラルが溶けだします。しかし、歯の表面にフッ素があると、それらのミネラルを歯に戻すはたらきがあります。
では、フッ素を活用することでどのくらいむし歯を予防することができるのでしょう。臨床研究結果からは、21~43%程度むし歯予防効果があることが分かっています。日本で市販されているフッ素配合の歯磨き粉は最大濃度が1450ppmで、その濃度であれば約30%程度の予防効果があります。
フッ素の効果を最大限発揮するために
歯磨き粉によって、配合されているフッ素濃度が違うため、より予防効果を望む場合は、最大量(1450ppm)配合されている歯磨き粉を選びましょう。また、使い方も重要です。せっかく高濃度の歯磨き粉を使用していても、使用量が少なかったり、歯磨き時間が少ないと、お口の中に残留するフッ素が少なくなるため効果が望めません。年齢別に推奨される量を以下に示します。
【0~2歳】1000ppm程度のものを、1回につき米粒程度
【3~5歳】1000ppm程度のものを、1回につきグリーンピース程度
【6歳~】1450ppm程度のものを、1回につき歯ブラシ全体に
さらに、歯磨き後のうがいの仕方にも気を付けておきたいポイントがあります。うがいを頻回にすると、せっかく取り込んだフッ素が流れ出てしまうので、歯磨き後のうがいは「ペットボトルキャップ1杯分のお水で1回すすぐ」だけにとどめておいた方がより予防効果が高まります。歯科疾患予防先進国であるスウェーデンの、イエテボリ法では、「1日2回、2分間、2㎝のフッ素配合歯磨き粉を使用してブラッシングし、ブラッシング後はうがいを1回に留め、2時間飲食を避ける」ことが推奨されていますよ。
当院では、お薦めの歯磨き粉を患者さまごとにお選びしたり、サンプルをお渡ししたりすることができますので是非気になっている方はご相談くださいね。