歯科から始める認知症予防
- 2025年9月24日
- 一般歯科
歳を重ねていき、できれば避けたい病気のひとつに「認知症」が挙げられます。
最新の研究結果では、認知症の約7割を占めるアルツハイマー型認知症の発症と歯周病が関係していることが分かってきました。
歯周病と認知症の関係?
歯周病は、歯周病菌がお口の中に住み着き、歯周組織(歯ぐきと歯を支える骨)に炎症を起こす病気です。それがなぜ、脳の病気「認知症」と関与しているのか疑問に思われる方も多いと思います。
実は、歯周病菌は、歯周ポケットの中だけに潜んでいる訳ではありません。炎症を起こした歯ぐきの破れを入口にして、血流にのり、歯ぐきの内部はもちろん、からだにも自由に入り込んでいます。からだは、歯周病菌の侵入を拒否すべく、免疫細胞を盾にするのですが、菌の数が多いと太刀打ちできません。また、免疫細胞の過剰反応で、認知症の原因物質である老人斑アミロイドβを増加させてしまうのです。
では、アミロイドβはどうやって脳にまで到達しているか?それも、歯周病菌が関係していることが分かってきました。脳には、「血液脳関門」という、門番のように働く脳血管の機構があり、通常は血液中の異物が脳にまで入らない仕組みになっています。歯周病菌が血液脳関門にまで到達すると、アミロイドβを脳内に送り込む受容体を増やし、ここから脳内に侵入したアミロイドβが徐々に神経細胞を傷つけ脳を委縮させるのです。
すなわち、歯周病菌は、歯ぐきの粘膜を壊して歯ぐきに入り込み、アミロイドβをたくさんつくるだけではなく、つくったアミロイドβを脳内に移送する役割もしている、とても厄介者なのです。
歯周病予防で認知症を防ごう!
厚生労働省によると、2021年では高齢者のおおよそ15%が認知症と診断されていますが、その後5年間で20%にまで増えると予測されています。これは大変な数字です。しかし、「認知症の発症を5年遅らせることができると、認知症患者を半減できる」という予測もあります。
歯周病は初期では痛みがないことがほとんどです。20代くらいまでの免疫が活発な時期は重症化することが少ないですが、30代を過ぎると徐々に炎症が起こりやすくなり、40代以降になると2人に1人は歯周病にかかっている、成人全体では8割くらいの方が歯周病だとする報告もあります。
前述のように、歯周病は歯周病菌が原因のため、歯周病菌を除去することが治療です。具体的には、ご自身で行う【セルフケア】、歯科医院で行う【プロフェッショナルケア】の2本柱です。プラークや歯垢と呼ばれるものはばい菌の塊で、その中に歯周病菌も存在します。毎日のブラッシングでこれを除去することはもちろん、お手入れのしづらい部位や、ブラッシングで落とせなくなった歯石は、歯科医院でしっかり管理していくことが理想的です。是非、美容院に定期的に通うように、お口のメインテナンスも生活の一部にしていただけたらと思います。
歯科医院で検診・メインテナンスを受けることで、認知症を予防しましょう!